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雪虫の話

今日も、学習能力のない私は
いつものように、電車時間ギリギリで家を出る。
小走りでホームに駆け込むと、電車遅延発生中。
なんだか拍子抜け。脱力。
こうなったら焦っても仕方ないんで
走った疲れを癒すかのように
電車が到着するまでボーっと線路を眺めていた。
すると、視線の先に、白いフワフワしたものが踊っている。
それを見て、過去の記憶が急速に蘇った。


遡ること、大学3年。
北国にある姉妹校に1年だけ通った頃。
生まれて初めて過ごす、雪が降る地域。
氷点下の温度を観測できる場所。
そんな北海道は、8月のお盆を過ぎた頃から、徐々に冬支度を始め、10月も半ばに入ると、昼夜問わず一気に冷え込んだ。
その日、閉門時間まで大学にいて、雑務をやっていた私。
教室に最終のチャイムが鳴り響き
ハッと我に返り時計を確認すると、既に日付が変わろうとしている。
急いで身支度を済ませ、家路をたどる。

校門を出ると、小川に沿った道がある。それが私の通学路。
街灯が少ない為、足早に歩いていると・・・『白い何か』に出会った。
季節外れのタンポポの綿毛だと思った。
光のない世界を静かに飛び交うそれは、キラキラと輝いていた。
帰路を、彼らと同じ白に染めて、導いてくれてるようだった。


翌日、その正体を知る。

『雪虫』というらしい。
雪降る地域には生息している虫。
雪虫は、冬の合図。
彼らが現れると、初雪はもう目の前だよ、と。

虫は大嫌いだけど、それまでずっと雪の降らない土地
南国から出たことのない私にとって
初めての雪虫は、妖精みたく目に映ったのを覚えてる。

数日後、空から雪が落ちてきた。
初めて見る雪は、夜空を彩る紙吹雪だった。
子供みたいに、空に顔を向けて大きく口をあけてみたり
手のひらで受け止めてみたり
触れるとすぐに姿を消してまって、世界一の照れ屋だと感じたり。
その日から、ほぼ毎日雪が降った。
日に日に積もっていく雪が、街の雑音と
私の中の雑音も吸収し、静寂を作ってくれる。
その、凛とした寂しさが漂う無音な世界が心地よかった。
雑念が入らず、色々な事が素直に考えられる空間の1つだった。


そんな思い出の1コマ。
さて、今、数年ぶりに出会ったわけだが
光に照らされている雪虫は………群がっててキモかった(ぁ
当時感じた美しさはどこへ行ったのやら。
見間違い?
それとも、記憶も雪化粧されて美化された??


兎にも角にも、冬がはじまる。

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